特許法 趣旨問題(補正17条の2第4項)

問:
発明の特別な技術的特徴を変更する補正が制限される趣旨(17条の2第4項)

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回答例:
従来の我が国の制度では、拒絶理由通知を受けた後に特許請求の範囲を補正して技術的特徴の異なる別発明に変更することが可能となっていたが、欧米の特許制度では、このような補正は認められておらず、特許制度の国際調和の観点から、このような補正を禁止することが適切である。
二以上の発明を一の願書で出願することができる範囲としては、発明の単一性の要件が規定されているが(特許法第37条)、現状では、拒絶理由通知を受けた後に特許請求の範囲を補正して技術的特徴の異なる別発明に変更することにより2件分の審査結果を得ることができるため、発明の単一性の要件の趣旨が没却されている。
このため、発明の単一性の要件の趣旨に鑑みれば、このような補正を禁止することが必要である。
拒絶理由通知を受けた後は、特許請求の範囲に記載された発明を技術的特徴の異なる別発明に変更する補正を禁止する。(平成18年改正解説43~44頁)

特許法 趣旨問題(補正17条の2第3項)

問:
いわゆる新規事項の追加の禁止の趣旨(17条の2第3項)

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回答例:
従来は、明細書又は図面の補正について、願書に最初に添付された明細書又は図面の要旨を変更する補正は認められないことが規定されていた(旧53条1項)が、この規定は、願書に最初に添付された明細書又は図面に記載されていない事項である新規事項であっても、明細書又は図面の要旨を変更しない限り補正を行い得るため、迅速な権利付与、第三者の監視負担の増大等の問題があったのみならず、主要国と比べても特異な規定であった。
このため、平成5年の一部改正において、明細書又は図面の補正については、主要国と同様に願書に最初に添付した明細書又は図面に記載した事項の範囲内においてしなければならないことが規定され、制度の国際的調和、権利付与の迅速化及び第三者の監視負担の軽減が図られることとなった。(青本49~50頁)

特許法 趣旨問題(補正17条の2第5項)

問:
最後の拒絶理由通知に対する特許請求の範囲についてする補正が制限される趣旨(17条の2第5項)

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回答例:
平成5年の一部改正前は、出願公告をすべき旨の決定の謄本の送達前は、拒絶理由通知の回数に関わらず、その応答期間内であれば、明細書又は図面の要旨を変更しない範囲で特許請求の範囲についても自由に補正することが認められていた(旧41条)が、この規定の下においては、
(1) 特許請求の範囲についての補正が何回も行われると、その都度審査を行うことが必要とされるため、審査遅延をもたらす一因となっていたこと
(2) 補正を何回も行う出願と補正を行わない出願との間において、出願の取扱いの公平性が十分確保されていなかったのみならず、主要国と比べても特異な規定となっていたこと
等の問題点を有していた。
このため、平成5年の一部改正においては、
(1) 第一回目の拒絶理由通知に対する補正については、特許請求の範囲の補正についても新規事項を追加する補正を認めないこととするのみで、自由な補正を認めることとすること
(2) 第二回目以降の拒絶理由通知に対する特許請求の範囲の補正については、既に行われた審査の結果を有効に活用できる範囲のものとすること
により、制度の国際的調和、迅速な権利付与及び出願の公平な取扱いが図られることとなった。この規定では、最後の拒絶理由通知以降の特許請求の範囲についてする補正を、先行技術文献調査の結果等を有効利用できる範囲内に制限している。さらに、分割出願制度の濫用抑止の観点から、50条の2の規定による通知を受けた場合についても同様の制限が課される。(青本47頁、51頁)

特許法 趣旨問題(補正17条の2第3項)

問:
17条の2第3項において、「誤訳訂正書を提出してする場合を除き」とした趣旨

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回答例:
翻訳文に誤訳があったときは、翻訳文に記載された事項の範囲を超えて補正がされるのが通常である。このため、誤訳の訂正を目的とする場合は翻訳文に記載された事項の範囲を超えて、外国語書面に記載されている事項を補正により追加できることとするため、「誤訳訂正書を提出した場合」を除く旨を規定した。(青本50頁)

特許法 趣旨問題(実施)

問:
輸出を実施に含めることとした趣旨(2条3項)

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回答例:
経済のグローバル化の進展により、我が国の産業財産権侵害品が国境を越えて取引される事例が増大する等模倣品問題の国際化・深刻化に鑑み、国内の製造や譲渡の段階では差止めができない場合であっても、輸出者が判明した場合には、権利者が「輸出」の段階で差止め等の措置を講じることを可能とするためである。なお、輸出行為自体は、国内で行われる行為であり、我が国の工業所有権の効力を直接的に海外における譲渡等の行為に対して及ぼすものではないため、属地主義には反しない。(青本14頁)

特許法 趣旨問題(発明)

問:
物にはプログラム等を含むこととした趣旨(2条3項)

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回答例:
現行特許法(昭和34年法)制定時には、譲渡、貸し渡しとして規定された市場における取引・流通行為の対象となる「物」としては、有体物のみを念頭に置けば保護対象として十分であると考えられた。
しかし、近年の情報技術の進展に伴い、プログラム等の情報財の経済活動における価値が急速に増大してきている。特にプログラムについては、インターネット等の情報通信手段の発達により、無体物でありながら、それ単体で有体物と同様に流通しているという実態も生じており、特許法において、従来の「物の発明」と同様の保護が強く求められていた。
これに対応し、特許庁では、2000年(平成12年)に改訂特許・実用新案審査基準を公表し、「コンピュータが果たす複数の機能を特定する「プログラム」は、「物の発明」として請求項に記載することができる」とする運用を開始した。この審査基準の改訂により、2001年(平成13年)1月10日以降に出願された特許出願については、記録媒体に記録されるか否かとは無関係に「プログラム」自身を、直接「物の発明」として請求項に記載することが可能となった。
なお、この改訂審査基準が適用される特許出願においても、それ以前と同様、プログラム関連発明を、「方法の発明」、「装置の発明」、「プログラムを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体の発明」等として請求項に記載することは可能である。
上記審査基準の改訂による対応については、おおむね肯定的な評価が得られたものの、民法では、「本法ニ於テ物トハ有体物ヲ謂ウ」(民85条)と規定されていることもあり、現行法の解釈のみで、「物」にプログラム等の情報財を含めることに対する懸念を指摘する意見もあった。このため、プログラム等の情報財が特許法における「物」に含まれることを、立法上の措置により明確化することが求められていた。
また、ネットワークを通じたプラグラム等の送信や、ネットワークを通じたASP(Application Service Provider)型のサービスにおいては、送信者やサービス提供者の手元にも元のプログラム等が残るという有体物にはない性質がある。このため、改正前の特許法第2条3項の規定における「譲渡」、「貸渡し」といった、権利、財産等の移転を前提とした用語のままでは、このような性質を持った新しい流通、サービス形態が物の発明の実施に含まれるのか明確でないとして、立法上の明確化を図るべきとの指摘がなされていた。
これらの点を踏まえ、プログラム等の無形の情報財についても特許権による適切な保護が図られるよう、特許法上の「物」にプログラムが含まれること、及び、ネットワークを通じたプログラム等の提供等の新たな流通・サービス形態が発明の実施に含まれることを明確にするための改正を行うこととした。(平成14年改正法解説7~9頁)