「水泳の選手って、さかなの顔だね。」
競泳をテレビで見ていた妻が言った。
「○○選手は、サバ。」
「△△選手は、サンマ。」
「みんな尖がった、三角の顔で、目が横にある。」
「速く泳ぐために、進化したんだね。」
「そう言えば、以前、天才少女って言われた女子競泳選手は、ヒラメ顔だった。」
妻は、この1年ほど、地元のスポーツクラブで水泳を習っている。
彼女の顔は次第に尖ってきた。
左右の目の間隔も離れてきた。
顔の肌も硬く、薄く細かい丸い皮膚が重なっているような肌になってきた。
水泳を始めて3年が経った。
妻の顔は、口元と顎が前に尖がり、目は真横に、肌は銀色の鱗に覆われ、完全に、鰺の頭になった。
アジの開き