13. 年齢確認

僕は、会社の帰りは、いつも駅前のコンビニで買い物をしてから家に帰ります。
家といっても、アパートの一人暮らしですので、帰っても誰も迎えるものなどいません。
仕事は、毎日、残業しない日はなく、家で自炊をする時間などありませんので、夕食類をコンビニで買って、一人ボソボソと遅い夕食をすませます。
あとはすぐに寝るだけです。
数時間寝て、目を覚ますと、もう、すぐに会社へ向かいます。
そんな毎日の繰り返しです。
ですから、ときどきは、コンビニで寝酒用の缶ビールを買ったりもします。
缶ビールを買うときは、決まって、レジで年齢確認があります。
もちろん、どう見ても僕は飲酒禁止の年齢には見えませんので、レジが「年齢確認が必要です」と言えば、当然に、店員さんが確認ボタンを押します。
当たり前の話ですが、缶ビールを買うときに、そこでストップするようなことはありません。

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酒類もそうですが、成人向け雑誌を買うときも、同じように年齢確認があります。
これも、もちろん、問題なく買うことができます。
僕は、正真正銘の大人の会社員で、見た目も年相応ですから、誰がどう見ても、未成年ではないことは明らかです。
ですから、レジが「年齢確認が・・・」と言っても、何もためらう必要もなく、すべて事務的に買い物は進みます。

今日も、残業でへとへとになりながら、帰りの電車を降りて、駅前のいつものコンビニに寄りました。
今日はビールを飲む気にはなれなかったのですが、陳列ケースにアイスバーの新製品があったので、これを食べたくなりました。
それは、期間限定の特別品で、そう言えば、電車の中吊りにも、新発売の広告が出ていました。
ここのコンビニでも、早速発売しているのですから、売り切れる前に買っておかないと、いつなくなるかわかりません。
迷わず、買い物かごにそのアイスバーを入れ、レジに出しました。
今日は、いつもと違う、新人の店員さんのようです。
その店員さんは、多少の緊張感を見せながら、淡々とかごの中の品物をバーコードリーダーにかざし、ビニール袋に入れていきます。
ちょうど、アイスバーをバーコードリーダーにかざしたときのことです。
「年齢確認が必要です」
と、レジが言いいました。
すると、店員さんが僕の顔をじぃっと見ました。
僕は、慌てふためきながら、運転免許証を取り出して、店員さんに見せました。
店員さんは、(極めて事務的に)「293円です。」と言って、アイスバーを袋に入れました。
あとは滞りなく、代金を払って、無事にアイスバーと弁当類を買うことができました。
アイスバーで、年齢確認されたのは、初めてだったので、年甲斐もなく、少し緊張してしまった自分が可笑しかったです。

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コンビニを出て、家へ向かう道すがら、僕は我慢ができずに、歩きながらアイスバーを取り出して、それにかぶりつきました。
そうして、アイスバーを食べながら歩道を歩いていると、車道を赤色灯をチカチカさせながら進んできた車が目に入りました。
覆面パトカーのようでした。
その覆面パトカーは、僕の数メートル手前辺りまできたところで、突然、
「そこの歩行者。歩きながらのアイスは危険ですよッ。」
と、スピーカーから大声で警告を発しました。
僕は、びっくりして、思わず立ち止まると、その覆面パトカーに一礼し、その場でアイスバーを急いで食べきりました。
食べきったときには、もう、覆面パトカーは、はるか後ろの方に走り去っていました。
僕は、「はぁぁっ」と大きくため息をつくと、家に向かって歩き始めました。


















投稿者: ひとき

ひときの短編集作者