14. チャンスと呼ばれた男 復活


とある公園に、一人のホームレスがいた。
その男は、スキンヘッドで、額には大きなアザがあった。
ホームレスになる前は、高級マンションに住み、毎夜高級クラブで豪遊するなど、相当に派手な暮らしをしていたという噂だが、ある時から、無一文になって、ホームレスの仲間入りをしたらしい。

ある日、彼は、育毛剤を拾った。
彼は、そのアザの部分に、その拾った育毛剤をふりかけた。
毎日、彼は、同じように、そのアザの部分に、育毛剤をふりかけた。
しばらくすると、額の部分には、うっすらと産毛が生えてきた。
更にしばらくすると、前髪だけが生えている頭になった。

前髪がそこそこに伸びて、手で掴めるくらいの長さになった頃、彼は、苦労してかき集めた小銭で、宝くじを買った。
買うときに、彼は自分の前髪を掴みながら、宝くじを受け取った。

それからしばらくして、彼は、その公園から姿を消した。

都心の高級マンションの一室に、彼の姿があった。
彼は、高級車を乗り回し、毎夜、高級クラブで豪遊していた。
豪華客船でクルーズの旅も楽しんだ。
何事にも、金に糸目はつけず、金を湯水の如く使っている彼の姿があった。
彼にとって、何事もチャンスであり、そのチャンスを逃すことは、もう無かった。

人は、例えて言う。
チャンスの神様には前髪しかないから、その前髪を急いで掴まないと、チャンスの神様は走り去っていってしまう。


 














投稿者: ひとき

ひときの短編集作者