18. 白い服の女

湖に2本の川がそそぎこんでいる。
河口近くには、幹線道路が走る橋がかかっており、それぞれ、A橋、B橋と名前がつけられている。
夏の夜、タクシーがA橋の手前にくると、白い服の女性が片手を上げて、「乗せて下さい」と言って、タクシーを止める。
乗ってもすぐに行先は言わない。
しばらく走り、B橋を過ぎた辺りで、運転手が、「どちらまで行きますか?」と言いながら、ミラーを見ると、座席にいるはずの女性の姿はない。
慌てて車を止めて、後ろの座席を確かめると、シートには小さな水たまりが残されているだけ。

何台ものタクシーが同じ体験をする。
きまって、白い服の女性がA橋の手前で乗車するが、B橋を過ぎた辺りで振り返るとその姿はなく、水たまりが残されているだけである。
A橋・B橋の幽霊として、地域では持ち切りとなった。

幽霊騒ぎが続いて1ヶ月ほど経った頃、新聞の地域欄に小さな記事が載った。
「A橋・B橋の幽霊、保護される」の見出し
A橋側からB橋を渡ってしばらく行ったところに、病院がある。
かの白い服の女性が、その姿を消す辺りに、その病院はあった。
一人の女性が入院していた。
その女性は、夜になると、家が恋しくなり、白い入院服のまま、病院を抜け出して、A橋の向こう側にある家に向かって、幹線道路脇の森の中の小道を歩いていく。
しかし、家までは遠いために、途中で諦めてしまう。
夜も遅いので、歩いてきた森の脇の幹線道路まで出ると、A橋の手前でタクシーを拾うのだった。
そして、B橋を過ぎて病院の近くまで来ると、運転手が見ていない隙を見て、窓から飛び降りたのだった。
病室からいつもその道路沿いを見ているので、その付近がどうなっているのか熟知している。
飛び降りる場所には、道路沿いに厚手の草むらがあって、飛び降りてもクッションとなって怪我をすることはない。
では、シートに残された水たまりは?
夜道を長い時間歩いていれば、用も足したくなる。
しかし、女性である。
誰も見ていなくても恥じらいがあるので、森の中でも用を足す勇気はない。
タクシーに乗って、ほっと安心すると、気もゆるみ、つい、おもらしをしてしまう。
その恥ずかしさもあって、病院近くに来ると、黙って、飛び降りていたという。
その日は、地元のお巡りさんが、たまたま仕事で遅くなり、その帰りに、夜、自転車でA橋まで来ると、白い服の女性がA橋の手前に立っているのを見つけた。
声をかけて、事情を聞くと、ちょうど、タクシーを拾おうとしているところだった。
そのお巡りさんは、その女性を迷い人として、警察署に連絡し、迎えに来た警察の車で病院まで送り届けたのである。

その後、風の噂で、その女性は無事に退院し、自宅に戻ったということである。
こうした結末もあって、この騒ぎがあったことなど、すぐに誰の記憶からも忘れられてしまった。

 

夏の晩、私は、車でこの幹線道路を走っていた。
A橋が近づくと、ふと、「そういえば、もう何年も前に、こんなことがあったな」と、A橋・B橋の幽霊騒ぎを思い出し、くすりと笑ってしまった。
A橋の手前にさしかかったとき、A橋の脇に白い服の女性が目に入った。
近づくと、片手を上げて、いかにも乗せてくれという仕草を見せた。
私が女性の前で車を止めると、その女性は後ろのドアを開けて、するりと後部座席に座った。
因みに、私の車はタクシーではない。
色は白だが、どこからどう見てもタクシーには見えない。
走っていくと、B橋を過ぎ、例の病院の辺りまで近づいてきた。
ちょうど、病院の前まで来たとき、私は、ミラーを見た。
女性の姿はなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「まるで、A橋・B橋の幽霊だな。」
私がつぶやくと、それが聞こえたのか、後部座席に横になって寝息をたてていた妻が、むっくりと起き上がり、
「なに、それ?」
と言った。
妻は地元の人間ではないので、幽霊騒ぎのことは知らない。

 

















17. ヘビになめられたカエル

カエルは動かなかった。
今、ヘビを目の前にして、ピクリともせず、ジッとして動かなかった。

こんなときなのに、カエルはこれまでの短い一生のことを思い出していた。

残してきた妻やこどもたちはどうしているだろうか。
そういえば、こどもたちには、まだ名前をつけてやっていなかったっけな。
とは言うものの、一万個以上の卵から一度に生まれてくる一万匹以上のこどもたち1匹1匹に、それぞれ名前をつけるなど、到底不可能だ。
それに、たとえ名前をつけてやったとしても、どの子がなんという名前なのか、わからなくなってしまう。
そうだな。名前なんて...。
カエルは、半ば自嘲的に苦笑いをしながら、ため息混じりにつぶやく。

そんなことを思いながら、今、自分はヘビを目の前にして動かずにいるのだと、我に帰る。
そんな状況の中で、走馬灯のように様々なことを考えて、その考えにふけってしまっていることの、なんと間抜けなことであろうか。

ヘビはカエルと触れてしまうくらい、すぐ近くまできていた。
ヘビはゆっくりと首をもたげ、口元がカエルの目の高さまできた。
そして、赤い細い舌で、カエルの鼻先をひゅるんと舐めた。

それは一瞬の出来事だった。
カエルは、目にもとまらぬ速さで、ヘビを舌に絡めてつかまえると、そのまま飲み込んだ。

ヘビの幼生は4~5cmほどの大きさだが、ウシガエルの成体は15cm以上にもなる。
初めから勝負はついていた。

 


 



 


 



 


 



 


 



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